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十六夜清心(いざよいせいしん)

心中するも死に損なった男女が辿る悪の道、数奇な運命を描く悲劇

本外題:

花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい) または
小袖曽我薊色縫(こそでそがあざみのいろぬい)

カテゴリー:

世話物

主な登場人物:

清心(せいしん)
極楽寺の僧。遊女の十六夜(いざよい)との関係がばれ寺を追放される。
十六夜(いざよい)
遊女。清心の子を身ごもり廓を逃げ出して清心の後を追う。
白蓮(はくれん)
俳諧師(はいかいし)、実は大盗賊、しかも生き別れた清心の実の兄。入水した十六夜を助け妾にする。

ストーリー・あらすじ:

極楽寺の僧侶・清心は、寺を修理するための金、三千両が盗まれる事件に巻き込まれ、捜査の過程で遊女・十六夜との関係が明るみになり、女犯の罪で寺を追放される。十六夜もまた清心の子を身ごもっていて、清心の後を追て廓を抜け出してくる。行き場のない二人は、思いあまって川に入水して心中を図る。

ところが二人とも死にきれず、別々に生き延びてしまう。清心が岸に這い上がってくると若者、求女(もとめ、実は十六夜の弟)が癪を起して苦しんでいるところに偶然出会う。介抱する清心は求女が懐に五十両の大金を所持していることを知り、求女を殺して金を奪ってしまう。悪の道に目覚める清心。一方の十六夜は 白蓮に助けられる。

白蓮の妾となった十六夜は本名のおさよにもどっていた。死んだ(と思っている)清心の菩提を弔うため、尼となって旅に出ることになる。

ところがおさよは旅の途中で悪人に連れ去られ女盗賊の地獄婆お谷(ぢごくば おたに)の子分、十六夜おさよ(いざよい おさよ)となっていた。また清心もすっかり悪党になっており、鬼薊の清吉(おにあざみのせいきち)と名乗る盗賊に墜ちていた。そんな二人が箱根の山中で偶然再会する。

清吉とおさよは悪党夫婦となり連れ立って白蓮を強請りに行く。ところが白蓮こそが三千両を盗んだ犯人、大盗賊の大寺正兵衛(おおでらしょうべえ)であり、また幼いときに生き別れた清心の実の兄だと知ることになる。思いもよらない因果に驚く3人。潜伏捜査をしていた役人に感づかれ、捕手に囲まれるが脱して逃げる。

清吉とおさよはおさよの父のもとに隠れる。清吉は自分が殺した求女がおさよの弟だという事実を知ることになり、おさよに告白する。激しく泣き悲しむおさよ。その因果の恐ろしさに自殺しようと争う二人。清吉はおさよをあやまって殺してしまう。清吉は後を追って自害する。

見どころ:

どっぷりと悪に染まった清吉とおさよの夫婦が、白蓮を強請る悪党っぷりがみどころ。

名台詞:

(求女を殺して金を奪い悪に目覚める清心)

『 待てよ。今日十六夜が身を投げたのも、
またこの若衆の金を取り、殺したことを知ったのは
お月様とおればかり。
人間わずか五十年、首尾よくいって十年か二十年がせきの山。
つづれをまとう身の上でも金さえあればできる楽しみ
同じことならあのように騒いで暮らすが人の徳。
ひとり殺すも千人殺すも、取られる首はたったひとつ。
とても悪事をし出したからは、これからは夜盗、家尻切り
人の物はわが物と栄耀栄華をするのが徳。
こいつあ~めったに死なれぬわえ。』

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