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仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
① 大序から二段目、三段目、四段目まで

歌舞伎でもっとも有名な人気演目

①(大序~四段目) ②(五段目 ~七段目) ③(八段目~大詰)

本外題:

仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)

カテゴリー:

三大名作

主な登場人物:

足利直義(あしかがただよし)
左兵衛督 足利直義(さひょうえのかみ あしかがただよし)は将軍足利尊氏の実弟。兄の尊氏から、滅ぼした敵将の新田義貞の兜を鎌倉鶴岡八幡宮に奉納するよう命を請け、京より下向する。
高師直(こうのもろのう)【悪役】
高武蔵守師直(こうの むさしのかみ もろのう)の高氏は足利将軍家を補佐する名家で師直は執事職。今回は直義の出迎え、饗応役の立場。傲慢な性格として描かれている。足利家に仕える身でありながら主家筋にも思ったことを臆面もなく言う。また塩冶判官の妻「顔世」に横恋慕する。
塩冶判官(えんやはんがん)
塩冶判官高定(えんやはんがん たかさだ)は伯耆国(鳥取県)の藩主。将軍家からすると外様大名。直義の饗応役(接待役)となる。普段は冷静沈着な性格。
顔世御前(かほよごぜん)
塩冶判官の正室。美女。元は宮中に仕えた女官。
桃井若狭之助(もものいわかさのすけ)
石見国津和野(島根県)の藩主。塩冶判官の同じく直義の饗応役となる。性格は真っ直ぐで短気、直情的。師直のいじめに合い切れそうになる。
加古川本蔵(かこがわほんぞう)
桃井若狭之助の家の家老。小波の父。塩冶判官が刃傷の時、後ろから判官を羽交い絞めにして止める。
戸無瀬(となせ)
加古川本蔵の妻。後妻。小浪の継母。
小浪(こなみ)
加古川本蔵の娘。本蔵の先妻の娘で、戸無瀬とは実の親子ではない。大星由良助の息子の力弥の許嫁。
大星由良助(おおぼしゆらのすけ)【主役】
塩冶家の忠義一筋の家老。息子は力弥。四十七士を率いて仇討ちを成し遂げる。
お石(おいし)
大星由良助の正妻。
大星力弥(おおぼしりきや)
由良助の息子。塩冶判官の側で仕える。小浪の許嫁。
早野勘平(はやのかんぺい)【主役級】
塩冶家の家臣。おかると城外で逢瀬をしていたとき、塩冶判官の刃傷騒ぎが起きる。主君の一大事のとき職務怠慢で不在したことが一生の不覚になる。
おかる
顔世御前に仕える腰元。早野勘平とは恋人同志。主家に戻れなくなった勘平と駆け落ちし、のちに夫婦となるも、京の遊郭"一力(いちりき)"の遊女になってしまう。

解説:

テレビドラマなどでおなじみの「忠臣蔵」の歌舞伎版。江戸時代元禄期(1688~1704年)に実際に起きた「元禄赤穂事件」(1701~1702年)をもとに、事件から約50年後に最初は人形浄瑠璃としてつくられた作品です。人気を博したのですぐに歌舞伎化されて上演されました。

江戸時代では実名による上演は体制批判とも受け止められるため、時代設定を江戸時代でなく、南北朝時代の「太平記」に移しかえて作られていいます。たとえば大石内蔵助(おおいしくらのすけ)は大星由良助(おおぼしゆらのすけ)に、浅野内匠守(あさのさくみのかみ)は塩冶判官(えんやはんがん)に、吉良上野介(きらこうずけのすけ)は高師直(こうのもろなお)に置き換えられています。

本外題の「仮名手本(かなでほん)」とは、習字の練習に使われた「いろはにほへと・・・」47文字のことで「赤穂浪士四十七士」になぞられてのことです。本作は全十一段の作品ですが、「二段目」と「十段目」は上演されずに除かれて、その他の段を通しで上演されることが多い。

ストーリー・あらすじ:

大序(だいじょ):鶴岡の饗応(つるがおかのきょうおう)

南北朝の争乱期、将軍「足利尊氏」が敵将「新田義貞」を討ち天下の実権を握りつつあった頃、鎌倉の鶴岡八幡宮では社殿の造り替えが終わり、京の都の尊氏の代参で弟「足利直義」が下向する。直義は兄より新田義貞の兜を八幡宮に納めよと命ぜられていた。その兜は後醍醐天皇から義貞に下賜された由緒のあるもの。

場面は鶴岡八幡宮の境内に陣取った馬場先。直義を中央に、鎌倉の執事職「高師直」、饗応役の「桃井若狭之助」、「塩冶判官」が集まっている。戦場から集めてきた四十七個の兜の中で義貞のものがどれなのかわからない。鎌倉府の重鎮高師直はもともと高慢な性格で、将軍の代理の直義よりも自分の方が実質の政治力は上だと思っている。「なぜ敵将の兜を」とか「どれが本物かわからない」と公然と直義に異を唱える。若くて直情的な桃井若狭之助が師直に反論すると、「若輩者はすっこんでいろ」頭ごなしに叱りつける。若狭之助が目の色を変えていきりたつのを察した塩冶判官がその場を無難におさめ、兜は直義に決めてもらおうと委ねる。

直義は、以前、宮中で「兵庫司(ひょうごつかさ)」として使えていた塩冶判官の妻「顔世御前」なら兜を実際に見て知っているはず、と顔世を呼び出して兜改めをさせる。顔世が呼び出され、天皇が義貞に下賜された際に兜に添えられた名香「蘭奢待(らんじゃたい)」の香るものこそが本物と見事に義貞の兜を見分ける。

兜が見つかり直ちに宝蔵へ収めようと一同は退場する。ところが美しい顔世を以前から狙っていた師直は、人が居なくなったのを見計らって付け文を渡そうとする。拒絶してもしつこく迫る師直。困惑する顔世。折よくその現場を若狭之助が見つけて顔世を助ける。邪魔された師直はますます怒り、若狭之助を散々罵る。若狭之助はカッとして刀を抜こうとするが、塩冶判官ら直義一行が通りかかるのに気づき無念ながらも押し止まる。

二段目:諫言の寝刃(かんげんのねたば)【上演されることは少ない】

場面は桃井若狭之助の屋敷。下男たちが庭掃除をしながら主人・桃井若狭之助が高師直にいじめられた噂をしている。桃井家の家老・加古川本蔵の妻・戸無瀬と娘・小波が病弱な桃井家の奥方様のお見舞いに来る。下男たちを追い散らすも、二人もまた噂を心配している。そこへ塩冶判官の家から家老の息子「大星力也」が明日の登城時間を伝える使者としてやってくる。力也は小波の許嫁。戸無瀬は気を利かせて小波に力也の応対をさせる。

その頃、桃井若狭之助は怒りが収まらない。家老の本蔵を呼んで師直を斬るつもりだと打ち明ける。本蔵はこの場で何を言っても聞かないと思い、突然、庭の松の枝を刀でスッパリと切る。そうやって刃傷をすすめるふりをする。本蔵に賛成してもらった若狭之助は安心する。

しかし本蔵は主君には内緒で師直に賄賂を贈ることでお家の危機を防ごうと考えていた。急いで豪華な品々を用意しに出掛けた。

三段目 恋歌の意趣(れんかのいしゅ)

場面は直義が逗留している御殿の門前。時刻は正七つ(午前4時)。師直が家来の鷲尾伴内(わしおばんない)と伴内と顔世御前を口説く算段をしながら到着する。そこへ若狭之助の家来・本蔵が師直に直接会いたいと来ていると告げられる。さては主君の意趣返しに来たなと待ち構える師直と伴内。ところが師直の前に出た本蔵は、控えて平伏して「主君がお世話になっているから家来一同からお礼として進物を差し上げたい」と黄金、反物などを山と並べ賄賂を渡そうとする。師直と伴内は拍子抜け。「これは痛みいる仕合わせ」と態度を豹変させて若狭之助を褒めはじめる。

一同退場後、遅れて塩冶判官が家来の若侍早野勘平(はやの かんぺい)を連れて到着し城内へ入るため退場する。その後に顔世御前に使える腰元・おかるの登場する。奥方様(顔世)から師直宛ての文箱を持っている。おかるは勘平に会いたくて使いをことづかってきた。文箱には師直の誘いを拒絶する和歌が入っている。おかるは勘平に首尾よく会えて文箱を渡すが、そこに師直の家来の伴内(ばんない)が現れる。伴内はおかるに岡惚れしている。抜き足差し足、ドジョウを踏むような脚付きでおかるに迫り抱きつく伴内。勘平の機転で伴内をうまくかわし、おかると勘平は手に手をとって門外へ消えていく。

城内では「師直め真っ二つにしてくれる」と待ち構える若狭之助。師直と伴内が登場し若狭之助を見つけると、師直は打って変わって物腰低く詫びを入れる。刀が抜けなく立ち往生する若狭之助を、伴内に連れられて退場。その様子を陰で見ていた本蔵は安堵する。

一人残された師直は内心面白くない。そこへ遅れて来た塩冶判官。「遅い」と悪態をつき始め、不愉快のはけ口は判官へ向けられる。さらに判官から渡された顔世御前からの返歌を読んで、人妻を口説いた結果、振られたと分かると怒り心頭に達し、判官を激しく口撃する。美人の奥方にべったりで家ばかりいる「井の中の鮒(ふな)」にたとえて「鮒侍(ふなさむらい)だ」と罵る。何度も刀の柄に手を掛けてはグッと堪えていた判官も耐え切れず師直に切り掛かってしまう。これは一大事と物陰で見ていた本蔵が判官を後ろから羽交い絞め、気づいた諸大名も判官を押さえつけられる。

おかると門外へ抜け出し逢瀬にふけっている間に大騒動が起きたことを知った勘平。御城は出入り禁止、裏門で主君判官が師直にまた主家のお屋敷は閉門となり戻れない。もはやこれまで、色ごとに夢中で主君の大事に居合わせなかったことを恥じ切腹しようとするが、おかるに止められる。おかるは勘平に自分の実家に身を寄せ、折をみて家老の大星由良助にお詫びをしようと提案する。勘平はおかるとともにおかるの故郷・京都の山崎へ落ちていく。途中でおかるに横恋慕の伴内が追いかけてくるが、勘平に蹴散らされる。

四段目 来世の忠義(らいせのちゅうぎ)

鎌倉の判官の上屋敷、謹慎中の夫判官を慰めようと妻の顔世御前は八重桜を籠に生けて、殿に献上する。重臣の原郷右衛門(はらごうえもん) と(おのくだゆう)が、本日上使が館に来るとの知らせを伝えに参上する。原郷右衛門は御赦しが出るのではというが、斧九太夫はそれを全く否定し師直に賄賂を贈っていたらよかったという。二人は口論になるが顔世はなだめる。顔世は内心和歌を師直に送らなければよかったと後悔する。そこへ上使が到着する。

上使から、判官は切腹、領地は没収と申し下される。最初から覚悟ができていた判官は少しも動じず、「委細承知仕る」と着物を脱いで白の裃の死装束となる。悲しみに暮れる顔世御前。ただ家老大星由良助に後を託して死にたい。なかなか現れない由良助を待ちきれず刀を突き立てたとき、ようやく由良助が国許から駆け付ける。「我が鬱憤を晴らせ」と由良助に遺言を残して息絶える。由良助は主君の形見の切腹に使った刀「九寸五分」を手に復讐を決意する。

判官の亡骸は光明寺に運ばれる。館では家臣たちが今後の身の振り方について話し合っている。籠城して戦おうと主張する若侍達、藩の財産を分け合って撤収しようという斧久太郎など意見が対立する。由良助がなだめ「一旦屋敷を明け渡し、時節を待って亡き主君の遺言どおり仇を討つために集まろう」と諸士をまとめる。明け渡しの時が来て、由良助たちは名残惜しげに館を出る。

館を出ると、館の前では明け渡しに反対する力弥たちが騒いでいる。由良助は判官の形見の刀を見せ、この刀で師直の首を討ちとろうと説得する。館の中では当家の末路をあざ笑う上使の声がする。悔しさに館の中へ飛び込もうとする諸士を由良助が制し、無念の思いで去っていく。

①(大序~四段目) ②(五段目 ~七段目) ③(八段目~大詰)

名台詞:

(三段目 喧嘩場にて高師直が塩冶判官を罵る台詞。)

『 さ!鮒(ふな)めが!鮒よ、鮒よ、鮒だ、鮒だ、鮒武士(さむらい)』

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