ホーム >舞踊 >娘道成寺

娘道成寺(むすめどうじょうじ)

恋する娘心を踊り貫く女形舞踊の極致。引き抜きで早変わりする衣装も魅力。

本外題:

京鹿子娘道成寺(きょうかのこ むすめどうじょうじ)

カテゴリー:

舞踊

主な登場人物:

白拍子花子(しらびょうしはなこ)
旅の白拍子芸人。白拍子とは男装の遊女や子供が歌いながら舞うもの。

ストーリー・あらすじ:

作品の趣旨は舞踊を観せることにあるので、ストーリー・あらすじはあくまでも舞踊の場面設定にすぎない程度です。ドラマ的な進展にこだわりすぎないで演者の舞踊、唄いなどを鑑賞するとよいでしょう。

★花子が登場する

安珍清姫の伝説(注)の後日談という設定です。桜が満開の季節。紀州(和歌山県)道成寺は清姫の一件以来、鐘が無く、また女人禁制となっていました。そんな道明寺にようやく鐘が奉納され、供養が始まろうとしています。所化(しょけ、修行中の若いお坊さん)たちが会話を楽しんでいるところに、都から来たという美しい女白拍子(しらびょうし)が現れ、新しい鐘をぜひ拝ませて欲しいといいます。所化たちは舞を舞うならという条件で男に見せかけるための烏帽子(えぼし)を渡し、女人禁制のお寺にもかかわらず入山を許してしまいます。

★憑かれたように次々に舞を舞う

金の烏帽子を付け、静かに舞い始める白拍子花子。やがて烏帽子を取り、憑かれたように次から次へ舞を舞っていきます。

「手踊(ておどり)」… 娘姿で切ない恋心を踊りです。

「鞠唄(まりうた)」… 少女の鞠つきをまねた踊りです。

「花笠踊り」… いくつもの赤い花笠を持って踊ります。

「手拭いの踊り」… 手拭い(てぬぐい)を手に不実な男への恨みの情をしっとりと舞います。

「鞨鼓の踊り」… 鞨鼓(かっこ)は胸や腰につけ両面を撥(ばち)でたたくつつみに似たたいこです。

「鈴太鼓の踊り」… テンポの速い田植え唄に合わせて、鈴太鼓(すずだいこ)を手に踊ります。鈴太鼓はタンバリンに似た平らな形で、鈴が入っており振ると鈴の音がする。

★鐘入り、蛇体の出現、押し戻し

花子は舞ながら鐘に近づき、突如形相を変え鐘の中に飛び込みます。すると突然吊ってあった鐘が落ちます。我に返る所化たち。花子は実は清姫の化身だったのです。鐘を引っ張り上げると中からは恐ろしい蛇体となった女が現れます。

ここまでで終わることが多いですが、最後に「押し戻し」が演じられる上演もある。荒事の扮装をした役者(役名はふつう、大館左馬五郞(おおだてさまごろう))が青竹を持って登場し、舞台にいる物の怪(今回は大蛇)が花道を通って外へ出ることがないように舞台へ押し戻し、元禄見得(げんろくみえ)で幕となる。

(注)安珍清姫の伝説

毎年熊野詣に来る若い僧・安珍に恋をした清姫が夫婦になる約束をするも、安珍は修行中の身のため約束を破って帰途についてしまう。怒った清姫は安珍の後を追いかけ、ついには大蛇になり道成寺の鐘の中に隠れた安珍を鐘ごと巻きついて嫉妬の炎で焼き殺してしまうという物語。

見どころ:

女方舞踊の最高峰、白拍子花子の様々な踊りは女の生涯の表しているといわれています。中でも手拭いの踊りの段が「クドキ」でハイライトで、通称「恋の手習い」といわれ、可愛らしい娘から、女に変わる場面です。手拭いを口にくわえたり、鏡に見立てて、紅をさしたり、手紙を書いたりと巧みに扱って艶っぽく優美に踊るところが見どころです。

「引抜(ひきぬき)」を行って観客の目の前で一瞬のうち衣装を何度も変えるところが見られます。引き抜きによって、着物の色彩の変化が楽しめます。また着物の文様は最初の枝垂桜が引き抜かれても引き継がれる演出ですが、鐘入りの段では蛇体を表す鱗模様へ一変します。

スポンサーリンク

inserted by FC2 system