作品の趣旨は舞踊を観せることにあるので、ストーリー・あらすじはあくまでも舞踊の場面設定にすぎない程度です。ドラマ的な進展にこだわりすぎないで演者の舞踊、唄いなどを鑑賞するとよいでしょう。
★花子が登場する
安珍清姫の伝説(注)の後日談という設定です。桜が満開の季節。紀州(和歌山県)道成寺は清姫の一件以来、鐘が無く、また女人禁制となっていました。そんな道明寺にようやく鐘が奉納され、供養が始まろうとしています。所化(しょけ、修行中の若いお坊さん)たちが会話を楽しんでいるところに、都から来たという美しい女白拍子(しらびょうし)が現れ、新しい鐘をぜひ拝ませて欲しいといいます。所化たちは舞を舞うならという条件で男に見せかけるための烏帽子(えぼし)を渡し、女人禁制のお寺にもかかわらず入山を許してしまいます。
★憑かれたように次々に舞を舞う
金の烏帽子を付け、静かに舞い始める白拍子花子。やがて烏帽子を取り、憑かれたように次から次へ舞を舞っていきます。
「手踊(ておどり)」… 娘姿で切ない恋心を踊りです。
「鞠唄(まりうた)」… 少女の鞠つきをまねた踊りです。
「花笠踊り」… いくつもの赤い花笠を持って踊ります。
「手拭いの踊り」… 手拭い(てぬぐい)を手に不実な男への恨みの情をしっとりと舞います。
「鞨鼓の踊り」… 鞨鼓(かっこ)は胸や腰につけ両面を撥(ばち)でたたくつつみに似たたいこです。
「鈴太鼓の踊り」… テンポの速い田植え唄に合わせて、鈴太鼓(すずだいこ)を手に踊ります。鈴太鼓はタンバリンに似た平らな形で、鈴が入っており振ると鈴の音がする。