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菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
① 加茂堤(かもつつみ)

三大名作のひとつ!
讒言により太宰府へ流刑された菅原道真にまつわる悲劇と奇跡の物語。

① 加茂堤  ② 筆法伝授  ③ 道明寺  ④ 車引  ⑤ 賀の祝  ⑥ 寺子屋

本外題:

菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

カテゴリー:

三大名作

解説:

平安時代の前期、菅原道真(すがわらのみちざね)が藤原時平(ふじわらのしへい)の讒言(ざんげん)により大宰府へ左遷された事件をもとにして作られた物語です。道真の祟り(たたり)の伝説と、江戸時代の初演の頃、当時大阪で男の子の三つ子が生まれたというニュースが取り込まれています。

全5段の狂言ですが、通しで上演されることは珍しく、「車引(くるまびき)」「寺子屋(てらこや)」などを単独で上演されることが多いです。

主な登場人物:

菅 丞相(かんしょうじょう)
右大臣、菅原道真(すがわらのみちざね)。博学偉才、知徳にたける。息子は菅秀才(しゅうさい)七歳。劇中では丞相(しょうじょう)様と役職名で呼ばれる。
時平 公(しへいこう)
左大臣、藤原時平(ふじわらのときひら)。帝の位を狙う巨悪。菅丞相の政敵、讒言により菅丞相を九州の大宰府へ流罪へと追い込む。劇中では時平(しへい)様と呼ばれている。
斉世親王(ときよしんのう)
醍醐天皇の弟。17歳。丞相の養女・苅屋姫(かりやひめ)と密かに恋仲。
苅屋姫(かりやひめ)
菅丞相の養女。16歳。斉世親王(ときよしんのう)と密かに恋仲。
梅王丸(うめおうまる)
三つ子の長兄で、牛飼い舎人(とねり)として菅丞相に仕える。妻は春(はる)。
松王丸(まつおうまる)
三つ子の次男で、牛飼い舎人(とねり)として時平に仕える。妻は千代(ちよ)。息子は小太郎(こたろう)。
桜丸(さくらまる)
三つ子の末弟で、牛飼い舎人(とねり)として斉世親王に仕える。妻は八重(やえ)。
白太夫(しらたゆう)
三つ子の父。摂津国の百姓。70歳になったおりに四郎九郎(しろうくろう)という名を改め白太夫と名乗る。
左中弁 平希世(さちゅうべん たいらのまれよ)
菅丞相の書道の弟子。丞相が失脚すると時平の側に寝返る。
三善清貫(みよしの きよつら)
時平の家来、悪役。

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ストーリー・あらすじ:

大序(だいじょ)・内裏(だいり)

(※ 浄瑠璃では加茂堤の前に「大序・内裏」の段がありますが、歌舞伎では上演されることは少ないです。大序では丞相と時平とが対立している構図が描かれています。)

平安時代前期の醍醐帝の世、天皇を中心とした政治が行われていた頃のこと。中国の唐(とう)の使者が「日本の帝の姿絵を写し持ち帰りたい」と願い出てきました。病中の身の醍醐帝は絵のモデルができないため、左大臣・時平(しへい)公が自分が代わりになろうと言い出します。帝にとって代わりたいという野心が言動に顕れです。それを右大臣・菅丞相がいさめます。そして帝の代わりは、お見舞いに参内している帝の弟・斎世親王がよいと主張します。これを帝が仔細を聞きおよび、丞相の提案通りにするように命じます。

また、帝からは書の名人・菅丞相に筆法の奥義を後継者に伝授するよう勅命が下る。

加茂堤(かもづつみ)

(※ この段の主人公は、梅王丸(うめおうまる)、松王丸(まつおうまる)、桜丸(さくらまる)の三つ子の兄弟です。)

梅王丸は菅丞相、松王丸は時平公、桜丸は斎世親王と、三つ子はそれぞれ別々の主人の牛舎の舎人(とねり)となっています。当時、貴族の主な乗り物は牛車で、牛舎の舎人とは牛車の運転手ようなものです。

今日は帝の病気の平癒祈願に、丞相の代参で左中弁希世、時平の代参で三善清貫、斎世親王の3者が賀茂神社に来ています。三つ子の牛車がそれぞれ稼働しています。

舞台には梅王丸、松王丸の二人がいて、牛車を止めて神事が終わるのを待っています。

二人はうたた寝から目を覚まし会話を始めます。会話の内容は今後のストーリー展開を理解する上で大事です。まとめると、
・我ら三つ子の兄弟は、都のはずれにある丞相(菅原道真)の所領(摂津国)に住む百姓・四郎九郎の子として生まれた。
・親父(四郎九郎)は三つ子は当時珍しかったので、不吉なものを生んだのかと心配した。それを丞相様が『三つ子は天下泰平の相を成す縁起の良いもの。舎人にすれば天子の守りとなる。成人したら牛飼として雇うから連れ来なさい』と我らを拾い上げてくれた。
・おかげで親父は丞相様が寵愛している梅、松、桜の3本の木の世話をする仕事(下屋敷を管理する仕事)をいただいた。我らも木にちなんで梅王丸、松王丸、桜丸の名をもらい、今の舎人の仕事についている。
・こうして安楽に暮らせるのはすべて丞相さまのおかげだ。(梅王が松王に)「今の主人(松王の主人・時平)への忠義は当然だが、丞相様の恩は忘れてはいけないぞ。」(松王)「わかっている、くどくど言う人だ」
・親父が七十の賀を祝いをするから女房を連れて来るように言っていた。

桜丸が現れます。「神事が終わりそうだからそろそろ様子を見て行ってはどうか」と梅王と松王の二人を体良く追い払っているのです。二人が退場すると桜丸は合図をします。すると桜丸の妻の八重が、丞相の娘の苅屋姫(かりやひめ)を連れて現れます。桜丸が仕える斉世親王(ときよしんのう)は秘かに苅屋姫と恋仲で、桜丸夫婦が逢引きの手引きをします。神事を抜け出した親王のいる牛車の中に、恥ずかしがる姫を無理やり押し込めます。

ところがそれを時平の方の三善清貫(みよしのきよつら)に感づかれます。牛車を取り調べようとする清貫。桜丸が力ずく清貫の手下らを蹴散らし大奮闘します。桜丸は強いです。気付く牛車に親王と姫の二人がいないことに驚きます。二人は騒ぎに紛れてこっそり逃げ落ちてしまったのです。桜丸は牛車を八重に任せて二人の跡を追って行きます。

① 加茂堤  ② 筆法伝授  ③ 道明寺  ④ 車引  ⑤ 賀の祝  ⑥ 寺子屋

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