筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)
「書道の奥義を後継者に伝えよ」という筆法伝授の帝の勅命を受けて、菅丞相はお屋敷の一室にこもり、後継者選びという神事に専念しています。
息子の菅秀才は7歳でまだ幼く伝授はできません。お屋敷に出入りしている弟子の左中弁希世(さちゅうべん まれよ)は、自分こそが伝授を受けるものだとうぬぼれていますが、地位や名誉欲しさの俗っぽい本性では到底、丞相の気に入る書は書けません。
熟考の末、丞相は武部源蔵(たけべ げんぞう)をおいて筆法を伝授できるのは者はいないと考えます。源蔵はかつて弟子でしたが、腰元の戸浪と恋愛が咎められて、今は戸浪共々勘当されています。当時はオフィスラブは厳禁です。丞相は源蔵を呼び寄せます。
呼ばれてお館に来た源蔵夫婦。聞けば、寺子屋をして細々と暮らしているとのこと。丞相も「いやしからぬ生業(立派な仕事だ)」と認めています。丞相は自ら書いた手本を見せ、その場で源蔵に書かせて実力を試します。嫉妬した希世がしきりに源蔵の邪魔立てするものの、源蔵は見事に清書して見せます。
丞相は満足し源蔵に筆法を伝授そます。源蔵は弟子に戻れるのかと喜ぶが、「伝授は伝授、勘当は勘当、さっさと出て行け」と勘当は許さない丞相。厳格な丞相です。
そこへ宮中より「すぐに参内せよ」と使者が来ます。丞相が正装に着替えて出かけようとしたとき、冠のひもが切れて落ち、「これは不吉なことがおこる前兆か」と心配しながらも出掛ける丞相。もう二度と丞相様に会えないのかと泣きながら別れを惜しむ源蔵夫婦です。
築地(つきじ)
丞相が三善清行(みよしの きよつら)ら役人に囲まれて館に帰って来ます。親王と苅屋姫の密会が露見し「帝を退け親王を帝位につけ、自分の娘を皇后にしようという陰謀で、謀反の企てだ。」と讒言にあい、丞相は無実の罪に陥れられたのでした。官位ははく奪、九州・大宰府へ流罪との処分は決まりました。朝廷に手向かいはしない丞相。お館は封鎖されます。丞相の大事を聞きつけて戻ってきた源蔵夫婦は、梅王丸から密かに丞相の息子・菅秀才を受け取り、自分の家にかくまうことになります。