ホーム >三大名作 >菅原伝授手習鑑 >⑥ 寺子屋

菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
⑥ 寺子屋(てらこや)

三大名作のひとつ!
讒言により太宰府へ流刑された菅原道真にまつわる悲劇と奇跡の物語。

① 加茂堤  ② 筆法伝授  ③ 道明寺  ④ 車引  ⑤ 賀の祝  ⑥ 寺子屋

本外題:

菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

カテゴリー:

三大名作

解説:

「寺子屋」は四段の切。上演頻度は最も多いとされる演目です。

主な登場人物:

菅 丞相(かんしょうじょう)
右大臣、菅原道真。博学偉才、知徳にたける。息子は菅秀才(しゅうさい)七歳。劇中では丞相(しょうじょう)様と役職名で呼ばれる。
時平 公(しへいこう)
左大臣、藤原時平。帝の位を狙う巨悪。菅丞相の政敵、讒言により菅丞相を九州の大宰府へ流罪へと追い込む。劇中では時平(しへい)様と呼ばれている。
梅王丸(うめおうまる)
梅王、松王、桜丸の三つ子の長兄。牛飼い舎人(とねり)として菅丞相に仕える。妻は春(はる)。
松王丸(まつおうまる)
三つ子の次男で、牛飼い舎人(とねり)として時平に仕える。妻は千代(ちよ)。息子は小太郎(こたろう)。
武部源蔵(たけべげんそう)
菅丞相の書道の弟子。菅丞相のお屋敷で腰元をしていた戸浪(となみ)と密通したため破門の身。妻は戸浪(となみ)。
戸浪(となみ)
源蔵の妻。
菅秀才
菅丞相の一人息子。源蔵の寺子屋で匿われている。
御台園生の前(みだい そのおのまえ)
菅丞相の側室。秀才の母。
千代(ちよ)
松王丸の妻。
小太郎(こたろう)
松王丸の息子。
春藤玄蕃(しゅんとうげんば)
時平の家来。首実検の使者。
左中弁 平希世(さちゅうべん たいらのまれよ)
菅丞相の書道の弟子。丞相が失脚すると時平の側に寝返る。
三善清貫(みよしの きよつら)
時平の家来、悪役。

ストーリー・あらすじ:

北嵯峨(きたさが)

菅丞相の御台(丞相の奥方、秀才の母)は眠りから目を覚ました。天拝山で丞相が天神になったのは実は御台が見た夢だったのです。御台のお側には八重や春がおり、北嵯峨で潜伏しています。

そこへ、時平の家来・星坂源五が手勢を率いて踏み込んできます。八重が薙刀で応戦するがあえなく死んでしまいます。御台が捕まりそうになったとき、謎の山伏が現れ、源五を投げ飛ばし御台を抱えて走り去っていきます。

寺入り(てらいり)

武部源蔵・戸浪夫婦は、芹生(せりょう)の里で寺子屋を営み暮らしています。家では寺子(てらこ、寺子屋の生徒)たちが並んで手習いをしています。その中に交じって丞相の息子・菅秀才が匿(かくま)われています。

源蔵が留守の時に、寺入り(寺子屋に入門)させたいと母子がやって来ます。子供の名前は小太郎。戸浪は小太郎を預かることにする。母親は「先に隣村で小用を済ませてくる」と言って席を立ちます。「お母さん、僕も一緒に行きたい」という小太郎を「おとなしく待っていなさい」となだめすかし、小太郎を置いて母親は妙に何度も後ろを振り返りつつ去って行きます。

寺子屋(てらこや)

源蔵が寺子屋に帰ってきます。菅秀才を匿っていることが時平(しへい)側に知られらたのです。庄屋に呼び出された源蔵は、秀才の首を差し出すように命令されています。困り果てる源蔵と戸浪。苦肉の策として秀才の身代わりに誰か寺子の首を渡そうと考えます。しかし「いずれを見ても山家育ち」。どの子も相応しくない。そこへ寺入りしたばかりの小太郎が挨拶に来て、いかにも育ちのよい品の良さに、源蔵は小太郎を身替わりにすることに決めます。

首実検の使者・春藤玄蕃(しゅんどう げんば)が松王丸を連れてやってきます。源蔵が奥に入り小太郎の首を斬って首桶に入れて持ってきます。菅秀才の顔を知っているのは松王丸。首実検を行うために玄蕃に同行しています。

切られた首を見て松王丸は「菅秀才の首を討ったわ。間違えない。」と断言します。安心した玄蕃は首を持って帰ります。松王丸も別れて帰っていきます。

小太郎の母親が迎えに来ます。口封じのため源蔵は小太郎の母親を殺そうとするが、刃を交わし母親は「息子の首はお役にたったでしょうか」と涙ながらにいう。驚く源蔵。そこへ松王丸が再登場する。死んだ小太郎は松王丸の息子、母親は千代、松王丸が身代わりの首にできるように仕組んだものだと明かします。

また松王丸が駕籠(かご)を招き入れると中から御台が現れ秀才と引き合す。御台は前段の北嵯峨の段で、時平の手の者に捕まりそうになったところ、山伏に助けられ連れさらわれていたが、実はその山伏は松王丸だったのです。御台の乗ってきた駕籠に小太郎の亡骸をのせ野辺送りをします。

五段目 大内天変(だいりてんぺん)

雷が内裏の上空で激しく鳴り響き、落雷が人々を悩ましていました。帝を守るため祈祷が行われているところへ、菅秀才の菅原家相続のことで天皇に仲介を頼むため、斎世親王、菅秀才、苅屋姫が参内します。

これを知った時平方は、三善清貫と左中弁希世を使って秀才を取り押さえます。ところが雷が落ち清貫と希世は焼け死にます。その隙に秀才は逃げ出すことに成功。

時平は動揺し「頼むは法力」と護摩壇に掛け上がると、時平の両耳より蛇が出きます。蛇は桜丸と妻・八重の亡霊となり時平を苦しめます。たまらず時平が庭に投げ出されたところ、すかさず菅秀才と苅屋姫が「父上の仇」と時平を懐剣で刺します。時平が息果てると、丞相の霊も鎮まったのか空は清々しく晴れ渡ります。梅王丸、松王丸、白太夫も参内し一同が集まったところに宣旨が下ります。菅秀才が家を継ぎ、菅丞相は正一位を贈られ、皇居の守護神として天満大自在天神と祭られることとなるのでした。

① 加茂堤  ② 筆法伝授  ③ 道明寺  ④ 車引  ⑤ 賀の祝  ⑥ 寺子屋

名台詞:

『弟子子(でしこ)といへばわが子も同然」「サア、今日に限つて寺入りしたは、あの子が業か、母御の因果か」「報ひはこちが火の車」「追付け廻つて、来ませふ」と、妻が嘆けば夫も目をすり、「せまじきものは宮仕へ」と、共に涙にくれゐたる。』

(生徒といえば我が子も同然なのにそれを殺そうととしている。こんな日に限って入門してきたとはなんと不憫なことか。あの子かあるいは母親かどちらかかに因縁があるにちがいない。いすれにしてもこの報いはこちらが地獄に落ちて購うしかない、そのうち火の車のお迎えがくるでしょう、と妻が嘆けば、なんともやるせない。宮使いなんかすべきでないな。と夫婦で涙にくれる。)

スポンサーリンク

inserted by FC2 system