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義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
① 序幕・北嵯峨庵室・堀川御所
(じょまく・きたさがあんしつ・ほりかわごしょ)

兄・頼朝に追われる義経、死んだはずの平家の武将、滅びゆく者の悲哀を描く

① 序幕・北嵯峨庵室・堀川御所  ② 鳥居前  ③ 渡海屋・大物浦  
④ 木の実・小金吾討死・すし屋  ⑤ 道行初音旅・川連法眼館

本外題:

義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

カテゴリー:

三大名作

解説:

三大名作のひとつ。全5段からなる構成ですが、歌舞伎では二段目「鳥居前(とりいまえ)」で始まり、四段目「河連法眼館(かわつらほうがんやかた)で終わることが多いです。

各段でそれぞれ主人公が代わります。二段目は平知盛(たいらの とももり)、三段目はいがみの権太、四段目は狐忠信が物語の中心人物です。一段だけでも物語が完結することから、二段目「渡海屋 大物浦(とかいや だいもつのうら)」、三段目「すし屋」、四段目「道行初音旅(みちゆきはつねたび)」「河連法眼館(かわつらほうがんやかた)」など単独で抜き出して上演されることもあります。

「初段」は歌舞伎では上演されることがほとんどありませんが、物語上では大切な部分です。「序幕」では「初音の鼓」を後白河院から義経に与えられるという物語の発端が描かれています。「北嵯峨庵室」は三段目(「木の実」「小金吾討死」「すし屋」)に繋がります。「堀川御所」は、義経と兄・頼朝との軋轢、平家の武将が生きていること、朝廷(後白河院)の策略、などが物語の重要事項が語られています。

主な登場人物:

源義経(みなもとの よしつね)
九郎判官源義経(くろうはんがん みなもとの よしつね)。源平合戦で平家を討伐するが、逆にその武力を恐れた兄・頼朝に嫌われ、追われる身となる。
卿の君(きょうのきみ)
義経の正室。
静御前(しずかごぜん)
義経の愛妾。母・磯禅師(いそのぜんじ)は白拍子。舞の名手 。
佐藤忠信(さとう ただのぶ)
佐藤四郎兵衛忠信(さとう しろうびょうえ ただのぶ)。義経の忠臣。兄の佐藤嗣信(さとう つぐのぶ)は義経に飛んできた矢に身を投げ出し刺さって死んだ。義経から信頼は厚い。
源九郎狐(げんくろうきつね)
忠信の姿に化けた子狐。
川越太郎重頼(かわごえたろうしげより)
鎌倉方の武将。卿の君の実の父。
平維盛(たいらの これもり)
平清盛(たいらの きよもり)の嫡男で平家の重鎮・平重盛(たいらの しげもり)の長男。すし屋弥左衛門(すしや やざえもん)のもとに、弥助(やすけ)と名を変え下男としてかくまわれる。
若葉内侍(わかばのないし)
平維盛の正室。
六代(ろくだい)
平維盛の子。
主馬小金吾武里(しゅめの こきんご たけさと)
主馬小金吾武里(しゅめの こきんご たけさと)。維盛の忠臣。
藤原朝方(ふじわらの ともかた)
左大臣、後白河院の寵臣。

ストーリー・あらすじ:

序幕(じょまく)

源平の合戦が終わり、源義経(みなもとの よしつね)の活躍で平家は滅亡しました。義経は後白河院の御所に呼ばれ、院は武功をたたえ、義経に「初音の鼓(はつねのつづみ)」を与えます。

「初音の鼓」とは、昔、干ばつで苦しんだとき、この鼓を叩いたら雨が降ってきたという不思議な霊力が宿る禁中の宝物です。大和国で千年生きたという狐の夫婦(源九郎狐の親にあたります)を狩り出して、その皮で作られています。

鼓を義経に渡しに来た、院の寵臣・藤原朝方(ふじわらの ともかた)が邪悪な意図を込めて「この鼓の裏皮は義経、表皮は頼朝、すなわち兄頼朝を討てとの院宣である」とでっち上げます。

院宣は「汗の如く」。一度発せられたら返上することはできません。兄・頼朝追討を命ぜられても拒否できずに苦渋の義経ですが、「鼓はいただきますが、打ちません(討ちません)。手も触れません。」と鼓を受け取って御所をあとにします。

北嵯峨庵室(きたさがあんしつ)

合戦で討ち死にした平家の武将・平維盛(たいらの これもり)の御台(みだい)・若葉内侍(わかばのないし)は、若君・六代(ろくだい)と京都北嵯峨の草庵に隠れ住んでいた。そこにもと維盛の家来・主馬小金吾武里(しゅめの こきんご たけさと)が現れます。小金吾によると、維盛は生きていて高野山にいるらしいといいます。若葉内侍、六代、小金吾の3人は高野山へ旅立ちます。

堀川御所(ほりかわごしょ)

義経の京での住まい・堀川御所に、頼朝の使者・川越太郎重頼(かわごえたろうしげより)が来ます。川越は鎌倉方(頼朝)が抱く疑念を3つ義経に詰問します。

問いの1。鎌倉に届けられた平家の大将格の武将3人の首、平知盛(とももり)、平維盛(これもり)、平教経(のりつね)のいずれもが偽首だった。3人はまだ生きており、それを知っていながら鎌倉に偽首を送って、死んだと嘘をつくのはなぜか?(この平家の3人は今後、物語の中心人物になります。)

これに義経は「3人が生きているのは知っている。大将である知盛らが死んだと世に知らせることで、ひとます天下を鎮めようとしたためだ。」と答えます。

問いの2。「頼朝を討て」との意が込められた「初音の鼓」を後白河院より受け取ったと聞く。これは鎌倉に対する謀叛の意のある証拠だ。(腹黒い藤原朝方は「初音の鼓」の院宣のことを鎌倉方にリークしています。)

義経は答えます。「たしかに「初音の鼓」は受け取ったが、それは院宣なので逆らえなかったまでのこと。鼓は打つ気もないし、手に触れてもいない。」と説明をします。

ここまでの義経の応答に、川越太郎は感服します。しかし3つめ問いには複雑な事情があってもめてしまいます。

問い3。平家一族の平時忠(ときただ)の娘・卿の君(きょうのきみ)を妻にしたことが頼朝公の不興を買っている。源氏に弓を引くのかと受け取られかねないのでは?

義経は「平家のものを妻にすることを咎めるのなら兄上(頼朝)の舅どの(北条時政)も平氏。まして卿の君は貴方(川越太郎)の実娘、それを時忠が養女にした過ぎないではないか」といいます。

義経の返答を聞き、頼朝公へこの通り話しても、その実「義経の義父だから庇っているのか」と思われるだけです。川越太郎は腹を切ろうとしますが、それを卿の君が止め、義経の嫌疑を晴らすため卿の君が自害してしまいます。義経は卿の君の最期を嘆きます。川越も悲しみつつも表向き名乗れないまま卿の君と親子の別れをします。

そこへ鎌倉方の海野太郎と土佐坊正尊が攻め寄せてきます。義経としてはここで鎌倉方と争うわけにはいきません。ところが弁慶が門外で海野太郎を打ち取ったと知らせがきます。弁慶のおかげで、卿の君の死が無駄になったと嘆く義経。ひとまず初音の鼓を持ち、駿河次郎と亀井六郎らと伴に館から脱出します。

① 序幕・北嵯峨庵室・堀川御所  ② 鳥居前  ③ 渡海屋・大物浦  
④ 木の実・小金吾討死・すし屋  ⑤ 道行初音旅・川連法眼館

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