鳥居前(とりいまえ)
義経と駿河、川越の三人は伏見稲荷まで逃れてきます。後から静御前が追いつきます。静御前は自分も一緒に行きたいといいますが、義経は女人禁制の多武峰(とうのみね:奈良県桜井市)の寺へ行くので連れて行けません。
遅れて弁慶が追いつきます。「弁慶のおかげで卿の君の死が無駄になった」と義経は怒り、扇で弁慶を何度も叩きます。弁慶は涙をはらはらと流し謝ります。静も一緒に謝ってくれてようやく弁慶は許されます。
義経一行は、多武峰へ行くのはやめて、船で西国へ向かうことにします。やはり危険な船旅のため静を連れて行くことはできません。一緒に行きたいと訴える静に、形見だと「初音の鼓」を与えます。静は同行を許されないのならこの場で死ぬというので、しかたなく鼓の調べ緒(しらべお)で静を木に縛り立ち去ります。
一人残された静。追手の残党・逸見藤太(はやみの とうた)に見つかります。藤太は鼓を奪い、静を連れて行こうとします。そこへ義経の家来・佐藤忠信(さとう ただのぶ)が現れます。忠信は不思議な力を使って藤太を討ち取り、静を助け鼓を奪い返します。実はこの佐藤忠信は白狐が化けているのですが、その真実がわかるのは四段目です。
助けられて静は大喜び、義経一行も戻ってきて忠信を褒めます。義経は褒美に自分の大鎧と自分の名前である「源九郎」を与え、これからは「源九郎忠信(げんくろう ただのぶ)」と名乗り、静を守れと命じ、静を忠信に預けて別れます。