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仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
③ 八段目から、九段目、十段目、十一段目まで

歌舞伎でもっとも有名な人気演目 全11段

①(大序~四段目) ②(五段目 ~七段目) ③(八段目~大詰)

ストーリー・あらすじ:

八段目:道行(みちゆき)

加古川本蔵の娘・小浪(こなみ)は大星由良助の息子・力弥の許嫁。判官刃傷の際、判官を抱き止めた本蔵は塩冶家からすると主君の思いを邪魔した恨みがある。事件以来疎遠になっている両家だが、小浪の力弥への思いは募るばかり。見かねた本蔵の若い後妻・継母・戸無瀬(とむせ)は断られることを覚悟して、小浪と二人、伴を連れずに鎌倉から力弥の住む京都の山科へ東海道の旅に出る。

※ 八段目は「道行」の場面で浄瑠璃の語りを聴かせるところです。語りには旅路の地名に因んだ掛詞(かけことば)が盛り込まれ、風景と人物の心情を表現する。浄瑠璃に合わせて人物はいろいろな振りや踊りをします。

※ 掛詞(かけことば)とは、意味は違うが同じ仮名で表記することばをひとつにしたもので、たとえば「ひとまつむしのこえ」では、「人を待つ」「松虫の声」と、「まつ」を掛けています。

※ 歌舞伎では三段目の終わりに「道行旅路花婿(みちゆき たびじのはなむこ)」という場面をつくり、勘平とお軽の道行として上演されることもある。勘平とお軽の道行では、美男美女の道行であること、季節が「花嫁」では冬なのに対して「花婿」は春、富士山を背景に満開の桜の舞台、後半は派手な立ち回りもありウケたので人気が出たという背景があります。

九段目:山科閑居(やましなかんきょ)

雪が降る季節。大星由良助の京の山科の別宅に戸無瀬と小浪が訪ねてくる。迎えたのは由良助の妻お石。戸無瀬はお石に小浪と力弥の祝言をあげさせたいという。お石は「仇討ちのため所詮命の無い息子。嫁をもらうわけにはいかない」という本心を隠し、「今は浪人の身だから釣り合わない」「進物を贈って媚へつらう武士の娘は当家の嫁にできない」などと拒絶するが、戸無瀬も可愛い娘のため簡単には引き下がらない。お石は夫を罵られても、「婚約したのだから嫁だ。嫁としておいてもらう」と食い下がるも「嫁というなら離縁した。帰ってください。」とけんもほろろで奥へ引っ込んでしまう。

残された戸無瀬と小浪の二人。折から虚無僧が尺八を吹いている。戸無瀬は小浪に力弥を諦めるよう勧めるが小浪の力弥への想いは強い。戸無瀬は実の子でない小浪を粗末にしたと思われては夫へ申し訳ないと自害を決意する。小浪もそれなら自分も死ぬという。刀を振り上げる戸無瀬。
そのとき「ご無用」と奥から止めに入る声。再びお石が出てくる。「主君の思いを邪魔立てした本蔵の首をこの三方にのせて引き出物に差し出すなら結婚は許そう」と無理難題をふっかける。困り果てる母子。そこへ虚無僧の姿をした本蔵が現れる。

「主君の仇も討たず放蕩三昧の腑抜けに首はやらない」とお石の差し出した三方を踏みつける。怒ったお石は槍を持って本蔵に挑みかかるが組み敷かれる。母を助けに力弥が登場し槍を拾い、本蔵を突き刺す。

由良助が登場し、娘のために自分から命を捨てに来た本蔵の真意を読み取る。死にゆく本蔵に奥庭に作った雪の五輪塔(墓)を見せ、討ち入りで死ぬ覚悟を教える。本蔵は引き出物として高師直の屋敷の見取図を由良助に渡して息絶える。喜ぶ由良助。結婚を許される小浪と力弥。翌日、本蔵の虚無僧姿を借りて討ち入りへと京を出発する。

十段目 天河屋義平(あまかわやぎへい)

【歌舞伎ではあまり上演されない】

大阪堺の廻船問屋・天河屋義平は塩冶家とは縁のある商人で、討ち入りのための武具を調達する役目を引き受けた。討ち入りが外部に漏れないように、義平は奉公人を、理由を付けて暇を出し、妻のお園も実家に帰して、店には義平、母親恋しと泣く四つの息子のよし松と子守り役の丁稚・伊吾の3人だけ。
夕方、塩冶の侍(大星力弥と原郷右衛門)が天河屋を訪ねる。明日、出立して鎌倉に向かうことを告げる。義平は討入りに使う武具は手配済みを報告する。ふたりを安心して帰る。

入れ違いに、妻・お園の父・太田了竹が来る。お園を金持ちの妾にしようたくらみ、離縁状を書けと言う。なくなく離縁状を渡して帰す。
その夜、突然捕り方が店に押し入ってくる。送ったはずの長持を運び込んできて中身を検めるから開けてみろという。義平が断ると、捕り方はよし松を連れてきて殺すと迫るが、「子供を殺すなら殺せ」と動じない。
それを聞いて、長持の中から大星由良助が登場する。取り方は義平を試すため由良助が仕組んだヤラセだった。由良助は無礼を詫び、義平の心に感謝する。義平は旅立ちの前に手打ち蕎麦をご馳走したいという。手打ちとはめでたいということで一同は奥へ引っ込む。

店の戸口に妻のお園が来る。義平が離縁状を書いたので驚いて会いに来た。よし松にも会いたい。しかしそもそもお園の父・了竹は敵方に縁のある人。恋女房のおその、母を慕うよし松が不憫ではあったが心を鬼にしておそのを追い返す。

店の外に一人取り残されたお園は自害して果てようとしたそのとき、覆面をした大男が現れる。大男はお園の髷(まげ)や髪に刺していたかんざし、懐の離縁状を奪って逃げ去る。義平もこの様子に気づき飛び出そうとするが必死に堪える。

そこへ由良助が奥から出てきて別れを告げ出発しようとする。世話になったお礼に包み物を義平に差し出す。義平は「金が欲しくて世話をしたのではない、義心からだ」と怒り出し包みを蹴飛ばす。ところが包みからは、お園の髪と簪、離縁状が飛び出す。

実は先ほどお園を襲ったのは由良助の家来だった。由良助が言うには、髪を切った尼ならば了竹も手が出せないし、乳母として子供の面倒をみられる。討ち入りが終わったころ髪も伸びるだろうから、その時になったらまた夫婦に戻ればよい、と。泣いて喜ぶ義平とお園。さらに、義平が討ち入りの同行できない代わりに、「天」「河」を合言葉に使うという由良助。感激する義平。鎌倉へ出立する由良助一同。

大詰(おおづめ) 高家討入(こうけうちいり)

ついに討ち入りの日が来た。大星由良助らは渡し船に乗り込み師直の屋敷のある鎌倉稲村ヶ崎に上陸する。

師直は由良助の放蕩三昧を聞いて真に受け油断しており、その日も酒宴がひらかれていた。由良助らは塀に梯子掛け忍び入った者が、中から表門のかんぬきを外して館内へ乱入した。竹をたわねて雨戸をバタバタと外す。師直側も「夜討ちだ」と気付き斬り合いになる。隣の屋敷から提灯を高く掲げて何の騒ぎかと呼び掛けられるが、由良助は「亡君の恨みを晴らすため師直を討ちに来た。他に危害を加えるものではない」と答えると「神妙である」と提灯を引いて静まり返る。

なかなか見つからない師名を矢間十太郎が炭部屋に隠れていたのを見つける。由良助が師直を上座に座らせて、大人しく首を渡すよういうと、師直はさあ首をとれと油断させておいて切りかかってきた。それをかわして「日ごろの鬱憤この時」と初太刀を切りつけた。そして主君の形見の九寸五分で首をかき本懐を遂げ勝どきをあげる。

由良助は懐から亡君塩冶判官の位牌を取り出し、師直の首を手向けて涙しながら仇を討ったことを報告する。焼香の一番目は一番槍の矢間十太郎。二番目は由良助のところだが、懐から縞の財布を取り出して早野勘平を指名する。勘平の代わりに、お軽の兄(勘平の義兄)身分の低い寺岡平右衛門を自分より先に焼香させる。

このとき師直の家来たちが攻め寄せてきた。そこへ桃井若狭助が助太刀に現れる。一同にねぎらいの言葉をかける若狭助。由良助一同は若狭助と別れ、判官の菩提寺光明寺へと向かう。

①(大序~四段目) ②(五段目 ~七段目) ③(八段目~大詰)

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